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人はなぜ寿司に魅了されるのか

条件が生育時にもたらされると、コメ作りはうまくいかなくなります。
それゆえ東南アジアには、たくさんの稲作儀礼に関するタブーがあります。 つまり植物生育のための生物学的諸条件が、そのまま生産技術に応用されるのではなく、人間社会の心理的諸条件に置き換えられて、現実の稲作が行われてきたのです。
戦前・戦中に、マレーシア半島で稲作儀礼の民俗調査を行った宇野円空という学者は、こうしたタブーを調査・研究しました。 農地へ行く途中に、カラスに出会ったり、動物の死骸などをみてしまったら、その日は田起こしをしない、などといった類です。
さらに、そのなかには肉を食べたら、稲作がうまく行かなかった、という事例もあります。 おそらく、これに類似した習俗が、古代の日本にもあったために、それを信仰していた支配者層が、稲作農耕推進のために殺生禁断令を出した、と考えて良いでしょう。
そして、その支配者たちの頂点に立つのが天皇でした。 しかも天皇は、前にふれたように、高天原から稲種を伝えた天照大神の子孫とされています。
このことが、代々天皇が稲作の祭祁に重要な位置を占めることに連なります。 毎年二月三二日つまり勤労感謝の日に、皇居では新嘗祭が行われます。
天皇は、皇居内の水田で、自ら田植えし刈り入れをして、コメを作っています。 そして、そのコメを酒にして、神に捧げるのです。

これは、その年の収穫に感謝し、翌年の豊作をお願いする儀式です。 これは毎年行われますが、天皇が代わった場合、新しい天皇が最初に行う新嘗祭は、特別に大嘗祭(”だいじようさい”ともいう)と呼ばれます。
これは天皇交替の儀式でもあり、農耕の神との新たな交信者の登場を意味しますから、きわめて盛大に行われます。 この大嘗祭は宮中最大の儀式で、天皇こそがコメ作りのための最高の祭祁者で、国家の統治者であることを、広く誇示するここになります。
現在、天皇は政治を行いませんが、平成二(一九九○)年の大嘗祭には、各国の君主・大統領クラスが招待されました。 こうした新嘗祭・大嘗祭の構造については、あとの3で、くわしく見てみたいと思いますが、歴史的に見て、コメと天皇は深い関係を保ってきたことに留意すべきでしょう。
日本の歴史のなかで、天皇が祁るコメは、まさに”聖なる”食べ物として、神聖視され肉食は”稜れ”こうした”聖なる”コメに対して、肉は”積れた”食べ物とされてしまいました。

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